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8. ②重さと強さのバランスの悪い家

 次に取り上げるのは、バランスの悪い建物です。建物のバランスが悪いと、地震が起きたときに、建物が大きく揺れることになります。
 「バランスが悪い」とは、家の重さの中心(重心)と、強さの中心(剛心)のバランスが悪いということです。重心と剛心のバランスが悪くなると、地震による振れ幅が大きくなります。
 バランスの悪い家は、場合によっては倒壊する恐れもあります。阪神・淡路大震災では、多くのバランスの悪い家が倒壊してしまいました。

こんな家が危ない

 バランスの悪い建物の一例としては、まずピロティ形式が挙げられます。ピロティ形式とは、建物を柱だけで支えて、壁のない状態を指します。
 読者の皆さんも、建物の1階部分か駐車場や駐輪場になっているお宅などをご覧になったことがあるでしょう。
 特に都市部などでは、限られた土地の中で駐車場を確保する必要があるため、比較的多く見られる形式ではあります。ただ、こうした建物では、大地震が起きたときに、1階から被害が起きる可能性が高まります。
 南面に窓が多い建物なども、他の方角よりも壁が少なくなるわけですから、必然的にバランスが悪い建物と言えます。
 また、キャンティレバー式の建物なども挙げられます。1階部分よりも、2階部分か跳ね出しているような建物を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
 バランスが悪い建物は、大地震のときは大きく揺れて、倒壊の危険性が高くなってしまうのです。

「デザインに凝った家」は、何かと問題あり

 揺れに強い家を作るには、きちんとした構造計算がなされる必要があります。構造計算とは、建物を設計する際に、地震などに対する安全性を計算することです。阪神・淡路大震災の際にも、きちんと構造計算している建物は、倒壊せずに残っているというデータが報告されています。
 安全を確保するには、構造計算のもとに家を建てる必要があります。
 とはいえ、建築の専門家でもない一般の人には、構造計算書を見せられても、どう判断すればよいのかわからないのが正直なところでしょう。解説書などを勉強するにも限界があります。
 ですから、基本的にはプロである建築業者に任せることになります。ただ、ひとつアドバイスをしておきたいのが「デザインに偏りすぎない、デザインと強度のバランスを確保する」ということです。
 そもそも設計家の多くは、家の形を美しく整える意匠設計家であり、構造計算についてはあまり得意としない方が多いのが一般的です。構造のことはある程度の知識の範囲で、深く考慮しないまま設計して、そのデザインに合わせて、構造設計者に構造を整えてもらう場合が多いのです。そうした理由などで、揺れに弱い建物が生まれてしまうケースがあるわけです。
 こうした意匠設計家の多くは、「いかに綺麗な建物を建てるか」に注力する傾向があります。たとえば、ガラス面を多く見せようと考えると、必然的に壁を少なくするという発想につながります。構造上は無理を強いることになりがちです。

安全を守るために必要なこと

 建物の安全を確保するうえで、建築基準法は最低限のルールを定めています。つまり、建築基準法を満たすのは当然として考え、建物の安全は構造計算の安全性レベルをいかに引き上げるか、にかかっています。そうした意味では、設計士の安全の配慮レベルが建物の安全性に直結します。このことは、住宅以外の建築物全般に言えることです。
 私の会社で手がける建物も、安全性を重視し、基本的には長方形か、正方形に近い形で設計しています。
 大切なのは、設計士が安全性を高いレベルで意識するかどうかです。構造計算上の安全比率を高めなければならないということです。家を設計する際には、施工業者がどこまで安全を重視しているかを確認しておく必要があるでしょう。