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18. ポイント② 安全対策を重視して予算を組む

 次にポイントとなるのが予算に対しての考え方です。
 誰もが名前を聞いたことのあるような大手の住宅メーカーでは、多大な広告費をかけてテレビCMを放映したり、1冊当たり2000~3000円にも相当するような豪華なパンフレットを見込み客に無料で提供しています。また、各地の住宅展示場にも多額のお金がかかっています。
 これらのコストは、当然、施工費に反映されることになります。原則的に住宅メーカーでの家づくりは割高になるということです。
 一方で、低価格を前面に押し出して営業をしている住宅会社も存在します。建て売り住宅などは、徹底的に抑えて販売されています。こうした低価格の住宅の中には、品質が疑問視されるものもあります。コストが抑えられることと引き替えに、不良工事につながるおそれがあるからです。
 コストと品質のバランスは難しい問題ではあります。ただ、地震に強く、なおかつ安くていい家を提供している会社は一定の割合で見つかるはずです。私の会社でも、低価格と安全性の両立を目指していますが、安く建てるがために起こる職人の手抜きや品質低下は絶対あってはならないと考え、品質を守るための仕組みや心構えを整えています。

地震対策の予算の考え方

 現在、大地震に対応した材料(装置)がたくさん出回っています。安くて性能の高いものはどれなのか、判断に迷うことも多いのではないでしょうか。
 まずは基本的な考え方を理解していただきたいのですが、地震への対策は「耐震」がスタンダードとなります。「耐震」は建築基準法で定められた安全の基準であり、建築業者が法に違反しない限り、どの住宅にも適用される耐震基準ということです。それから「制震」「免震」「断震」という順に耐震レベルが上がっていきます(詳細は第2章)。
 予算に関しては、第2章でご説明したように、ハウスメーカーなどで取り扱っている制震材は、大体、200万円前後が一般的な相場となっています。一方で、免震装置は付帯工事を含め500万~1000万円くらいのコストがかかることになります(地盤のよしあしや施工方法、建物の大きさ、建築条件などによってもコストは上下します)。
 いずれにせよ、家全体に占める予算の割合は大きなものになるので、慎重に検討する必要があるでしょう。

安全・安心を最優先する

 まずは、絶対に予算オーバーにならない計画を立てることが第一です。「どんな家がほしいか」よりも「どれだけの予算で家を建てるか」のほうが重要です。お金の問題をペースに家づくりを考えるのが基本です。
 無理をしてさまざまな設備を設けた結果、家族が苦しい思いをして生活しなければならなくなったり、ローンを払いきれなくなったらどうでしょう。何のために家を建てたのかわからなくなってしまいます。
 家づくりを考えるお客様の中には、キッチンのグレードや床暖房といった装置や、デザインなどに意識が向くあまりに、安全対策に予算をかけるという意識が乏しくなる傾向があります。
 また、東日本大震災からある程度の時間が経過し、人々の中に、ともすれば安全に対する意識が薄らいでいる傾向があるかもしれません。
 しかし私は、家族の安全や安心を最優先にすべきであると考えます。家は、家族の安全や笑顔を守るためにあるのだと思うからです。予算を検討する際には、改めてそのことを認識していただきたいと思います。

ローコストで効果大の「制震テープ」

 制震材においては、一般的には、先ほどお話しした200万円前後がメーカーなどでは目安となって、その価格帯に合った商品が提案されるケースが見受けられます。
 確かに、戸建て住宅の制震装置には、さまざまなものがあります。カタログを見ても、どれがよいのかわからないという声も耳にします。そのため、平均的な予算をもとに、業者の営業マンがすすめる商品を設置してしまうのでしょう。
 私は、これまで、多くの研究者に実際に会って話す機会を得てきました。その中で感じたのは、先にもお話ししたとおり、「複雑な仕組みの装置よりも、シンプルな仕組みの装置のほうがすぐれている」ということでした。
 仕組みが簡単であれば、機械自体も壊れにくく、メンテナンスのコストもかかりにくくなります。
 その意味では、私の会社で採用しているI社の制震の原理は理にかなっていると考えています。これは、木造住宅の家全体に「制震テープ」を貼りつけるというものです。
 地震のエネルギーは、構造体に伝わります。この構造体と構造用合板の間に制震テープを挟み込んで、家全体を吸震器として機能させるという考え方です。
 この考え方は、比較的ローコストでありながら、大量の制震材を活用します。簡単な原理でありながら、防災科学技術研究所の実物大実験において、阪神・淡路の大震災を想定した1.2倍の負荷をかけてもまったく住宅の破損がないという結果が報告されています。
さらに2倍の負荷にも倒壊せずに一部損傷程度という驚きの結果が出ているといいます。
 一般的な制震住宅は、機械に想定以上の負荷がかかり、機械が損傷してしまうことがありますが、この制震の原理は、その心配もありません。そもそもが、機械でないからです。
 私たちの会社では、この制震システムを設置しつつ、家全体を誰でも手の届く程度のコストで装備し、安くて地震に対しても安心基準の高い家を提供しています。
 予算の都合で、十分な制震装備をつけられないという話を耳にします。しかし、低コストと品質を両立させる商品が存在します。これからの家づくりを考えるときには、コストを抑えながらでも、安全対策にも意識を向けていただきたいと思います。