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20. ポイント④ 地震保険はどこまで必要か

 私の身近に、新築引き渡し後、わずか5日にして、東日本大震災による津波で、家を流されてしまった方がいます。
 幸いにも奥様は無事だったのですが、ご主人は1か月以上経過してから発見されました。重症を負って、病院の救急治療室に収容されていたのだそうです。そのため安否の確認が遅れていたということです。
 命に別状がなくてよかったのですが、これからのことを考えると、厳しい現実がのしかかります。手に入れたばかりの家を失い、現在は遠方に住む身内を頼って生活されているそうですが、お子さんはまだ小さく、今後の見通しはつかないと言います。
 津波で家が流されたり、地震で家が倒壊してしまった場合、住宅ローンはそのまま残ることになります。そのため、住宅ローンを抱えた被災者は、ローンと賃貸などの二重の支払いに苦しむことになります。新たに家を建てるために銀行から借り入れをするとなると、いわゆる「二重ローン」を背負うことになってしまうわけです。

地震保険とは何か

 住宅には火災保険をかけるのが一般的ですが、火災保険では、地震の際の被害に対して(火災であっても)保険金は支払わないのが一般的です。支払いが一部されるケースも、わずかな範囲ではありますが、大きく期待できるものではありません。
 そうした意味でも、地震への備えとしては、地震保険に加入する必要があります。この地震保険の加入率は、2010年度末のデータによると、平均で30%にも満たないとされています。東日本大震災の影響を受け、今後の普及が予想されますが、これまで十分に浸透しているとは言えない状況でした。
 ここで、地震保険とは、どういったものかについて、解説したいと思います。
 地震保険は、地震や噴火、津波などを原因とした住宅の損害を補償する災害保険です。民間保険会社が負う地震保険責任以上の損害を、日本政府が再保険するという国の制度です。民間保険会社は窓口となっているだけで、地震保険で利潤を得ているわけではありません。
 この地震保険は、火災保険とセットで契約する方式となっています。すでに火災保険に加入している場合でも、途中から地震保険に加入することはできます。また、建築中の建物は、居住用であれば補償の対象となります。
 火災保険の保険金額の30~50%の範囲内で保険金額を決めることができます。ただし、建物は5000万円、家財は1000万円が限度となっています。
 実際に地震の被害を受けた場合、建物や家財が全損、半損、または一部損となったときに保険金が支払われることになります。支払われる金額や、全損、半損、一部損の基準は下記の表の通りです。
 なお、保険料は、「木造」か「非木造」か、あるいは建物が建っている都道府県により、異なります。保険料のめやすは下記の表を参照ください。



地震保険はあくまで生活費の補てん

 地震保険の補償額には一定の限度があります。つまり、新築したばかりで、ローンのほとんどが残っているような状況では、住宅ローンをすべて返済することは難しいということです。
 そもそも、地震保険は、被災者の生活安定を目的とした制度です。つまり、保険金として支給されるお金は、被災した人の一時的な生活費を補てんするための意味合いが強いのです。
 多くの人がその辺りをしっかりと理解していればよいのですが、地震で家が倒壊したからといって、新しい家が建てられるわけではありません。
 皆さんもご存じの通り、国は慢性的な財政赤字を抱えており、債務は増える一方です。ここに来て、震災や原発問題が重なり、財政逼迫は加速化しています。政府が消費税の増税を検討しているというニュースが聞かれるようになりましたが、仮に増税を実行したとしても、膨大な債務を解消できる保障はないのが実情です。
 結論を言えば、災害が起きたときに、国に全面的な補償を求めるのは難しいということです。家は自分自身で守るという意識を持つ必要があります。

民間による地震対応商品もある

 日本震災パートナーズという民間保険会社が運営する、「Resta(リスタ)」という地震補償保険があります。これは、従来の地震保険とは異なる、地震用保険です。海外資本による保険会社が作った制度であり、地震保険で足りない部分を支えるという意味合いを持つ保険です。
 この商品の特長は、以下の3つにまとめられます。

①単独でも、地震保険の上乗せとしても加入できる
 火災保険と地震保険に加入していなくても、単独で加入することが可能です。また、地震保険に加入した上で、上乗せして加入することもできます。その場合、地震保険によって受け取る保険金とは別に、保険金を受け取ることになります。これが、「地震保険で足りない不足分を支える」ということです。

②支払査定は、自治体発行の被害認定のみを基準にする
 「Resta(リスタ)」の保険金の支払査定は、保険を運営する日本震災パートナーズが被害調査を行うのではなく、第三者である地方自治体が調査して発行する「り災証明書」に基づきます。そのため基準が明確であると言えます。これは、保険会社が被害状況を調査して、補償額が決定する地震保険とは異なっています。

③保険金を自由に使うことができる
 支払われた保険金は、建物や家財を修繕したり、買い換えたり、ローンにあてるだけでなく、引っ越しの費用や生活費にあてることができます。

 同社のホームページでは、その場で保険料をチェックすることができます。
 東京都の木造住宅に、4人家族で住んでいる場合で見ると、月々2840円の保険料で、全壊700万円、大規模半壊350万円、半壊116.7万円の補償額となっています。
 同じく同社のホームページで、地震の被害を受けた場合にかかる費用を算出できるのですが、これを見ると下記の図のようになっています。
 この試算を見ると、地震保険のメリットが理解できると思います。なおかつ、地震保険と「Resta(リスタ)」をダブルかけすることによって、完全ではないにしても、地震で必要となる生活再建費用をある程度はフォローできることもわかります。
 私の会社の場合、新築物件に関しては、一定の地震には対応できるように施工しているため、保険のダブルかけまでは推奨していません。
 ただし、特に地震の際に倒壊の危険性の高い建物や、リフォームだけで対応しようと考える場合には、こうした制度の活用をご提案しています。
 地震保険は、建物の古さやメンテナンス状況に応じて、査定方法が変わります。また、リスタに関しては、対象となる建物は「昭和56年6月1日以降に建築確認を受けた建物(マンション含む)、または耐震改修によって同時点の新耐震基準を満たした建物(マンション含む)に限る」とされています。詳しくは、保険会社への問合せをおすすめします。
 たしかに、地震保険は、地震の規模によってどこまで補償されるかわからないという側面はありますが、リスクに備えた手を打っておくに越したことはありません。
 東日本大震災でも、職を失われた方が生活を再建することの難しさは、ニュースなどでたびたび指摘されていることでもあります。そう考えると、保険という制度の活用は有効なリスクヘッジのひとつと言えます。どのようなケースにおいてもしっかりと準備を整えることが、いざというときの備えにつながることを忘れないでください。

どの保険が適切かを知っておくことが大切

 火災保険に加入する際などを思い浮かべていただきたいのですが、担当者からすすめられるがままに、内容もよく理解せず加入してしまうケースがしばしば見受けられます。
 「この程度の保険料と補償額が一般的です」などと提案されると、深く考えずに選択してしまうことが多いのではないでしょうか。
 保険においては担当者の提案の仕方が大きな意味を持っています。お客様にとって本当に必要な保険を的確に提案する担当者が必要なのは言うまでもありません。しかし、現実には理想的な担当者ばかりではないのです。
 住宅の保険には、「必要なもの」と「不要なもの」があります。たとえば、高台にある家にもかかわらず、水害に対応した保険に加入しているお宅があります。
 きちんと確認すれば、こうした保険は不要であることがわかります。しかし、加入時に担当者の説明が不十分で、お客様自身にも理解が足りない場合には、こういう無駄が起きてしまうわけです。
 また、保険にはさまざまな特約があり、保険会社によって、その内容に差があります。
 たとえば、パッと見ではAという保険商品が安く感じられるのですが、よく調べていくとBという商品のほうがお得であるということも少なくないのです。
 保険というと「とにかく最低のものでいい」と言う方もいらっしやいますが、実際に被災したときのことを考えると、不十分な保険もあります。さらに、保険商品内容は、年を重ねると入れ替わっていたりするため、その当時はよかったが、いまでは優位性に欠けるという場合もありますので注意が必要です。
 理解不足のまま契約するのは大きなリスクになることを理解しましょう。ある程度内容を理解すれば、保険料と補償の関係が把握できるはずです。
 その家ごとに、必要な保険は異なります。どういったものが相応しいのか、担当者に明快な説明を求めるのは当然ですが、自らの知識を高めることも重要ではないでしょうか。