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21. ポイント⑤ 信頼のできる業者に依頼する

 これまで、ハウスメーカーや工務店、設計事務所などの担当者任せにするのではなく、自分自身で情報を収集して判断することの重要性をお伝えしてきました。
 これは住宅会社を信用するな、という意味とイコールではありません。情報を収集したり、判断力を磨く目的は、信頼できる会社を見つけたり、信頼できる提案をしてもらうことです。信頼できる会社(あるいは担当者)を見つけることができれば、あとは全幅の信頼を寄せて任せるという姿勢も必要となってきます。
 私は、これについて、よくお医者さんと患者の関係にたとえてお話することがあります。
病気になったときに、人は自分の病名や治療法について知ることはできますが、最終的にはお医者さんを信じて治療をゆだねることになります。
 ですから、大切なのは、信頼できるお医者さんを見つけることなのです。

ポリシーを持った会社と出合う

 世の中にはさまざまな建築業者が存在します。会社によって、安心や安全に対する力の注ぎ方もまちまちなのは事実です。
 商品を売ることに汲々としている会社がある一方で、日本が地震国であることを踏まえ、危機感を持って家づくりに取り組む意識の高い会社もたしかに存在します。
 これは、しっかりとした情報を収集したうえで、数社の担当者と接触すれば、ある程度の判断」がつくのではないかと思います。
 売ることに主眼を置いている担当者は、商品のメリットや価格については、すらすらと答えることができますが、「どうしてその商品をお客様におすすめするのか」という理由があいまいなことがあります。
 しっかりとした意識を持つ会社の担当者であれば、社会的なミッションに基づき、お客様のニーズを理解した上で、お客様に提案をします。そのため説得力に大きな差が生じるのです。
 私自身、商品を売ることが先行している会社に、一生に一度の家づくりを託そうとは、どうしても思えません。私の会社では、「お客様への約束」として以下のモットーを謳っています(以下、一部抜粋)。

一、私たちが命がけで作るのは「安くて良い家」でなければならない。
一、自分の家づくりの経験を過信してはならない。
一、家づくりは引渡しをして終わりではない。引渡し後もお客様にとって住まいのよき相談者としてアフターサービスにつとめなければならない。
一、家づくりの過程でお客様を不安にさせるだけでプロとして失格である。

 私が自社の営業担当者や設計士に繰り返し伝えているのが、自分の仕事の社会的な意義を考えることや、その意義とおすすめする商品との関わりを意識することです。私の会社では、社内勉強会などを開いて理解を深める場も積極的に設けています。こういった取り組みは、意識の高い会社であれば、大なり小なり取り組んでいるはずです。

本当に信頼できる業者とは

 お客様が家づくりに夢と希望を抱き、「お洒落な家に住みたい」「デザインにはとことんこだわりたい」と考えるのはよくわかります。
 ただし、家づくりのプロがデザインのリクエストばかりを重視して、安全対策を軽視するとしたら大きな問題です。
 本当に信頼できる業者とは、もっと幅広い視点からお客様にとって本当に必要な家を提供するものだと思うからです。
 もちろん、お客様が納得の上で見た目を重視した家を建てるのであれば、他人がとやかく口を出す余地はないのかもしれません。ただ、構造の知識が前提にあれば、意匠の要求を満たしながら、もっと安全で安心な家を作ることができるはずなのです。
 私は家づくりの大前提は、安全と安心であると考えています。家族の命や健康を守ること。そして予算的に無理のない家を作ること。あとでお金のやりくりに苦しんだり、地震の際に大きなダメージを受けるような家は、お客様にとっていい家であるとは思えないからです。

 そういった前提を踏まえた上で、信頼できる業者を見分けることが大切です。詳しくは拙著『あとで後悔しない「いい家」の建て方』(学研パブリッシング)に記しましたが、ここではいくつかのポイントについて、お伝えしたいと思います。

ホームページを見比べる

 おそらくほとんどすべての住宅会社がホームページを公開しているはずです。これを見比べるだけでも、それぞれの会社が何を重視しているかが伝わってきます。
 耐震住宅で十分であると考えている会社と、新しい制震材や免震材を取り入れている会社とでは、当然ながら、紹介している商品ラインナップに差が生まれます。さらに太陽光発電を取り入れたスマートシティ構築などに目を向けている会社もあります。
 私の会社でも、ホームページで地震への取り組みを公開しています。また、地震対策をテーマにしたセミナーを開催することもあり、ホームページ上でご案内もしています。

 私自身、日本という国で家づくりに携わる者として、巨大地震について自分なりに勉強を重ねてきました。調べれば調べるほど、安全対策が不可欠であることを認識しました。
 一般的な耐震住宅以上の安全な家を安く提供できないかを、大きなテーマとして追求してきたのです。
 ホームページでは、その会社が何を重要視しているか、というボリュームを確認することで、その会社の安全性基準の考え方を伺い知ることができます。
 もちろん地震対策や環境対策だけに意識が向いていればいいというわけではありません。肝心の施エレベルが低かったり、マナーが劣っていたのでは大切な家づくりを任せようとは思えないでしょう。建物の意匠も含め、全体的なバランスを考えながら、相応しい会社を選ぶことが大切です。

ホームページ全般から会社の向き合い方を確認

 ホームページやブログを見た上で私の会社に相談を寄せたり、各種の見学会やセミナーに参加されるお客様は、直接お会いする前に私のことをよく知っていただいている方がほとんどです。
 初対面にもかかわらず「樋口さんですね」と声をかけていただくことがしばしばあるのです。
 お客様が「家を建ててくれる人」のことを知る。建てる側も、お客様のことを深く知る。これは、お互いを尊重してよりよい家を形づくっていく上で、非常に大切なことではないでしようか。
 家づくりについて確かなポリシーを持っている会社は、会社の大小を問わず、ホームページでも自社の考え方をきちんと打ち出していることがわかります。ホームページの作り方などは各社それぞれですが、そこに働く人の人間性や個性が表れていると、より安心できるのではないでしょうか?
 見た目のよさやイメージだけでなく、そういったメッセージに注目してみるのをおすすめします。
 そして、家づくりで大切なことは、人と人との関わり方です。そうした意味からも、ぜひ、建てた後のおつき合いがしっかりしているか? 単なるアフターサービス基準に合わせたメンテナンスだけなのか? それとも、その会社は、建て終わった後のお客様とそれ以上のおつき合い(感謝祭、BBQ、その他、交流の場など)をしているかも大切なところであります。働いているスタッフの顔が見えるか? 職人さんの顔が見えるか?考え方が伝わってくるか? など、さまざまな角度から確認してみてください。そうしたことを通して、その会社のお客様へ向かう姿勢を感じてみてください。

相見積もりは、ほどほどに

 複数の業者からの見積もり(相見積もり)をたくさん取って、とにかく安い価格を提案した会社に依頼するという方法は考え物です。
 たしかな家づくりをしている会社は、多くのお客様から支持される傾向にあるため、安易な価格競争に参加しない傾向があります。無理に受注をして、最終的にお客様にご迷惑をかけるわけにはいかない、と考えるからです。逆に言えば、簡単に値引きをしたり、価格競争に乗っている会社は、依頼して大丈夫なのかを考え直す必要もあります。
 過度な相見積もりの結果は、家づくりにおいて弊害をもたらす恐れがあります。単価が低いために職人のモチベーションが上がらなかったり、ひどい場合には手抜き工事が行われる可能性もあるのです。安さを求めすぎる結果、建物にしわ寄せがくるケースがあるのです。なぜなら、家は人の手で作られるものだからです。
 また、最悪の場合、価格競争に疲弊して、会社が倒産してしまう危険性も指摘できます。そうなったら、せっかく家を建てたとしても、アフターサービスをしてもらえなくなります。家づくりの最中に会社が倒産したら、泣くに泣けない状況が起きるでしょう。
 以上のことを考えると、相見積もりに頼る行為は、優良会社から自分を遠ざける危険性があることを知っていただきたいと思います。

専門性・得意分野はどこか

 前ページで工法の違いについてお話しました。一般的には、どれも同じ住宅という枠組みでとらえられるかもしれませんが、工法によって家づくりの工程や段取りは大きく異なります。
 つまり、木造と鉄骨、鉄筋などでは、異なる知識や技術が求められるわけです。
 そうなると、おのずと会社によって、得意分野(手がけている件数の多い工法)が決まってきます。不得意な工法で家を作ると、施工に無駄が生じてコストがかさんだり、施工不良の危険性も生まれます。
 一方で、同じ工法でたくさんの現場を管理していれば、一定した品質の家を安定して提供できる体制も確立できます。
 こういった専門性や得意分野は、担当者に直接質問してみたり、実際の現場を見学することである程度つかむことができます。

スタッフの連携は良好か

 営業の担当者と、設計や現場の意志の疎通が図れていない。これは、本当にいい家を作る上では大きな阻害要因となります。
 家は、携わるすべての人間がチームとなって作り上げるものです。そのため、チームのメンバー同士の連携が非常に重要となります。
 お施主様自身が、設計事務所と工務店を別個に選ぶケースなどの分離発注がありますが、これはリスクの大きいやり方であると考えます。まず、設計事務所からの慣れない指示に、施工会社が対応できない場合があります。当初の意図から離れて施工が進んでしまったとき、責任の所在があいまいにもなりがちです。
 私は設計と施工の分離発注には懐疑的です。設計事務所が施工会社を競争入札させることも問題があると思います。設計業者を選ぶのであれば、施工業者と円満なつき合いがあるかどうかを確認するのをおすすめします。いつも同じ会社と長年仕事をしているということであれば、安心感も増すことでしょう。