40. 知っておきたい住宅のリサイクル
私は以前から環境対策のセミナーなどを開催して、お客様に対する認知活動を行ったり、環境負荷を軽減する商品の提案に努めてきました。
また、国土交通省の事務機関である住宅リフォーム推進協議会の中にある産業廃棄物対策委員会において主査を務めるなどの取り組みを行っています。
産業廃棄物対策という側面から考えても、環境負荷を軽減する家づくりがいかに重要であるかがわかります。
皆さんは、家を建て替えるときに出る廃材はどのように処理されるかご存じでしょうか。
建築廃材は、中間処理施設というところに搬送され、ここでリサイクルできるものとできないものに選別されます。ちなみに、この段階での細かな選別はすべて手作業で行われていることも、一般的には知られていない事実です。
ここでリサイクルされない廃材は、基本的に混合廃棄物と高塩化物、そしてアスベストなどと呼ばれるものです。混合廃棄物とは、簡単に言うと、2つの物が組み合わさるとリサイクルが不可能になるということです。たとえば、ダンボールにコンクリートの固まりが付着していると、そのまま廃棄するしかないのです。また、高塩化物とは、濃度の高い廃プラスティック類を指します。
この住宅リサイクルの考え方は、住宅業界に関わっている人の中でも深く理解している大は少ない状況があります。
たとえば、ビニルクロス(ポリ塩化ビニルを主原料とする壁紙)の悪玉説です。
この素材を使うのは地球環境にとってよくないことであり、「珪藻土」などの自然素材を使うのが好ましいなどと専門家が解説していることがあります。たしかに健康面では理想的な素材ですが、廃棄面から見ると、実際には石膏ボードの下地に珪藻土を塗るケースが大半です。つまりリサイクルできない混合廃棄物になってしまうのです。
一方で、ビニルクロスは石膏ボードから剥がすことができるものであれば、分別して、先端の廃棄物処理施設の場合、高性能の焼却炉で焼却することができ、その火力子エネルギーによって近隣世帯に電力を供給しています。また、石膏ボードに関しては再生されます。
つまり、廃棄の面から見た場合には、ビニルクロスのほうが環境には優しいと言えるのです。これは業界内でも、ほとんどの人が知らない事実です。それ以外にも、現場で発生する段ボールなども濡らしてしまうだけでリサイクル不能になってしまいます。こうした知識を持ちながら、一般の建築現場が管理されるようになるために、廃棄面という角度からの認知活動を行っているのです。
リサイクル率の向上は生産業者の責任
さて、一般的には、リサイクルされない廃材は、さらに最終処分場へと搬送されます。
最終処分場への搬出をなくすために、かなりのコストをかけて高性能廃棄炉で高熱処理という方法もありますが、コストなどの面から限界があります。
最終処分場は、地方の山林にあります。端的に言えば、山林に廃材を運べるだけ運び込み、土で埋め立てているのです。
私は、さまざまな業界関係者を連れて、こうした中間処理施設や最終処分場を見学する機会を設けています。現場を実際に目の当たりにすることで、どれだけ建築廃材が膨大なものであるかを感じます。また、どれだけ環境に負荷をかけているかも実感できます。そして、設計段階、提案段階、さらには、現場での廃棄物の少量化を心がけることによる環境負荷低減を伝えています。
現在、家電メーカーに対しては、家電リサイクル法のもと、一般家庭や事業所から排出される家電製品についてリサイクルを進め、廃棄物を減量することが義務づけられています。私は住宅についても、同様の責任をメーカーが負わなければいけないと考えています。
併せて、建築現場から出る廃棄物の量を減らしていくこと、また、リサイクル率を高めるための正しい処理方法を身につけていくことが大切です。
世の中にはリサイクル100%を目指して現場での廃材の分別を徹底している業者もあれば、まったく無頓着な意識の低い業者も見受けられます。
こうした意識の差は、お客様ヘリサイクル率の高い素材を提案できるかなどにあらわれます。
繰り返しますが、これから家を作ろうと考えている方には、さまざまな面から、ぜひ施工業者の環境意識をチェックしていただきたいと思います。