第一章 どうして住宅業界は遅れてしまっているのか?
どうして住宅業界は遅れた体質を持っているのでしょうか?
その理由はいくつか挙げられます。
1つは、お客様から仕事をいただいているという意識が薄く、感謝の気持ちも欠如しているということです。例えば、住宅会社が大手ハウスメーカーの下請けに従事しているようなケースでは、実際にそこに住むお客様の顔が見えない状態で仕事をしているわけです。
そのため、お客様に対してありがたいという気持ちが薄れがちです。今の時代は不況の影響で少ないでしょうが、現場が変われば、なかには「仕事を請けてやっている」という態度があからさまな職人さんもいないわけではありません。お客様から注文をいただくことで自分の生活が成り立っているという意識が欠落しているケースがあるように感じられます。
また建築業界というのは男性社会であるがためか、売り込む際の強引な体質が残っていることも挙げられます。売ることが出来ない営業マンはノルマに追われ「決算期だから」という理由で、お客様に頼み込んで受注を懇願する例もあったり、決断をためらっているお客様の背中を無理に押すようなケースが見られます。
強引な営業手法問題の一因
大手のハウスメーカーにしても、モデルハウスに見学に行って帰ってきたら自宅の前に営業マンが待っていた、というような話には枚挙に暇がありません。
朝出かけるときに「行ってらっしゃいませ」と挨拶をし、帰ってくれば「お帰りなさい」と出迎える。「夜討ち朝駆け営業」のようなことが、わずかですが未だに行われていたりするのです。
また、それと関連して女性の進出が遅れていることにも業界の問題が表れていると思います。他の業界では、女性の活躍を耳にすることが増えてきましたが、建築業界では、まだまだ女性のクリエイティブな発想を活かそうとする土壌が整っていません。男性社会がそれを邪魔しています。その教育体制も不十分と言えます。
また、多くの人間が家づくりに携わっていることにも問題点があるように思います。1つの家をつくるには、職人、設計者、営業マンといった異なるタイプの人達が関わることになります。
そういった関係者のなかで、密なコミュニケーションや意思疎通が図られていれば問題はないのですが、現実にはそれぞれが分断されていて、異なった「常識」の中で仕事を続けている。その結果として最初にご紹介したような失敗例が生じてしまうわけです。